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エゴン・シーレ 日記と手紙 大久保寛二編・訳 + 生い茂る樅の森の暗い紅色の円蓋のなかにぼくはかえっていった。 森は密かに息づき、無言のうちに見つめあう。 樹幹の眼はたがいに絡み合い、もうもうと濡れた息を吐く。 なんとすばらしい! すべては生きながら死んでいる。 + シーレの散文詩『樅(モミ)の森』から。 シーレの絵、そして彼の存在感に恋していた学生時代。 上京後、 1991年にBunkamura ザ・ミュージアムで、初めて彼の絵を観た。 私にとって、奇蹟のような出来事だった。 本当は、触れてみたい、そのドローイングに。 彼の指が描いた線をたどってみたい。 悪戯な欲望が、私の中でいっぱいになった。 これは、『エゴン・シーレの手紙と散文』(アルツゥル・レスラー編) に掲載されたシーレの文章の全訳本。 この本を手にして感動したのは、シーレの詩的な文章の美しさ。 「おそらく二十世紀でもっとも美しい書体で書かれた画家の手紙」 と評されるように実に美麗な書体なのだ。 画家として(とくに素描はすばらしい)天賦の才能を持っていたシーレ、 文字のグラフィックという点でもすばらしい感性の持ち主だったのだ。 愛しきナルシスト、シーレ。 彼から一度、手紙を貰ってみたかった。 まさか... 彼の絵で特に好きなもの 『愛の行為』『ヴァリーの肖像』 (C)1991年 白水社 ISBN4-560-03947 << EXIT :::: NEXT >> |